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カテゴリ:石屋小僧( 57 )

S君のこと vol.2

S君の父親技能五輪世界大会石工の部で金メダルを受賞、その息子である彼も挑戦することになりました。
21歳という年齢制限があるので、高卒者は3年足らずの練習期間で腕を上げなければいけません。

もちろん仕事をしながらですから、目標ができて励みにはなるものの、なかなか大変な日々を過ごすことになります。
でもまあ、道具を使いこなせるようになるには仕事に精を出すのが一番ですから、忙しいのもそれほどマイナスというわけではありません。

S君も父親に負けないほどの素質を持ち、かつ努力家であることは、その父親と無二の親友であった雇い主のOさんが認めるところです。

周囲の期待と、練習で培った自信を胸に国内大会に臨み、課題作品をほぼ完璧に仕上げたようです。
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実力があるだけに、制限時間を残して完成してしまいました。
仕上げ面を細かく点検します。

点数制というわけではなく、寸法通りかどうか、仕上げ面にムラはないか、角は指定角度になっているかどうか・・・
チェック項目をクリアしてなおかつ他の競技者との比較になりますので、自己チェックも慎重かつ細心になります。

少しだけ、ほんの少しだけ気になる点を見つけたようなのです。
時間が迫っていれば見過ごしていたかもしれないような、些細な個所らしいです。

手直しをしようとして
   ・・・欠かしてしまいました・・・
血の気がひいたことでしょう、それまでの苦労が水の泡…

審査員曰く「実力は文句なく一番。だが欠けた部分は規定の寸法をクリア出来ていないので、1位にはなれない」
眼前に迫った世界大会への切符を最後の最後に逃してしまいました。

※ 写真は当時の課題作品とは別ものですが、ほ
  ぼ同等かそれ以上の複雑な形を要求されます

  種々の道具を駆使して、角出しだけではなく
  真円や逆アール、内角の彫りこみなど様々な
  技能が試されます。

by himaru73 | 2008-02-26 13:30 | 石屋小僧 | Comments(10)

S君のこと vol.1

石屋小僧になって2年がそろそろ経とうかというころに、唯一在籍していた職人(私のことです)が辞めるという事態が発生しました。

石彫のサワリ部分に差し掛かった程度なので、いくら筋が良いといっても石仏なんぞ作れるレベルには達していません

先輩はすでに年季明けしています。
同期のK君とともに先頭に立つ羽目になってしまいました。
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しかしまあそこは本人のモチベーションの高さと生来の器用さ。
Oさんも、工場へ入る機会を増やしたようです。
師弟共に危機感を持つことによって、元々あった才能が早めに開花したのかもしれません。

私もトラブって退職したわけではないのでできるだけの協力はしたいと思い、休日等に時折工場に寄っては質問を受けたり、手直しの指示をしたりしてやりました。

甲子園まであと一歩というところまでいった元高校球児なので、体力は十分。
かといって力任せというところは微塵もなく、ポイントをうまく見極めてズバッといくタイプなので、石彫に向いていたのでしょう。
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年明けするころにはそれなりの仏像を造っていました。
5年でかなりのレベルに達したS君はほめられて然るべきなんですが、やはりいま一つ物足りなさというか青さみたいなものを感じる出来でした。

Oさんと私の一致した見解は、石彫は7年修業して一人前。
S君が仕上げた後ほんの少し、職人が手直しをするだけで印象が変わります。
万人の鑑賞に堪える製品=商品となるのです。

あと一歩のステップアップですが、そこを抜けるのに必要なのが何といっても経験です。
既に通ってきた者として、S君のこの段階からまだ2年あるということを、客観的に見た思いがします。

※ 作業風景は投稿内容と合ってますが、写真の
  モデルはT君です。
  頻繁に登場してもらうT君、そろそろ記事中
  に紹介しなければ…

by himaru73 | 2008-02-24 17:22 | 石屋小僧 | Comments(8)

H君のこと vol.6

前回に続き、初代“そうじ大臣”についてです。(・・・初代しかいませんが・・・)
作業員として、職場環境を最善の状態に保つことは当然のことです。

電動工具のコードやエアーツールのホースが絡み合って、空きスペースは常に埋まっています。
足を引っ掛けてつんのめることもあります。
手をつこうとした先に鋭角に突き出た石が置いてあったりします。
石屋の加工場なんて、それこそ危険がいっぱい
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作業能率の向上や怪我の防止はもちろんですが、掃除、片付けを励行することによるメリットはいろいろあります。

道具を所定の場所に戻すことによって、
 (1)見たり触ったりする機会が増える。
 (2)何のための道具かを考えることができる
 (3)使いやすい配置を考えることができる。
 (4)使う順番をシュミレーションできる。
 (5)消耗や破損具合を常時チェックできる。
まだまだありそうですが、
技術向上に役立つことは間違いありません

他にも、
突然見学の申し入れがあったりするので、見た目良くしておいたほうがいいに決まっています。

狭い工場を効率よく稼働するために全体を見渡す目が養われます。

やることが見当たらなかったり一息つきたい場合に、片付けをやっていれば働いているように見えるということもあります。
・・・そんな要領のいい小僧もいました・・・

ここまでは職人の立場として思い至ったことですが、小僧としては別の見方があったのかもしれません。

「たかが掃除のことで職人を煩わせるのは小僧の恥だ!」
H君はそのように檄を飛ばしたと聞きました。
たよりになるなぁ、と改めて感じ入った次第です。
by himaru73 | 2008-01-16 17:49 | 石屋小僧 | Comments(4)

H君のこと vol.5

H君を「そうじ」大臣に任命しました。

事の発端は、雑談中に出たOさんの何気ないつぶやきでした。
最近工場の中が乱れてるよなぁ
 ・・・そうですねぇ・・・

Oさんが時々「掃除をしろ!」と声を荒げているのを耳にすることはあります。
職人からも指導をしろってことなのかな・・・

(ここで注釈)
私としては親方>職人>小僧程度に思っていたんですが、Oさんの頭の中では、親方≧職人≫(はるかに下)≫小僧なんです。

落ち着いて考えてみると、要は整理整頓であって、何も職人が音頭を取ってやるほどのことはないわけです。
事は簡単、H君に言えば済むことです。
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職人≫小僧を意識してしまった私は、いわゆるキレた口調で言ってしまいました。

”職人はモノを作ってナンボなんじゃい!そのための環境を整えるのもお前らの仕事だろうが!
何で職人が親方に掃除のことで小言を言われにゃならんのじゃい!”

察しの良いH君は早速後輩に説教しました。
もちろん先頭に立つのはH君です。
私が意図する以上の掃除体制を整え、それ以降工場が片付いたのは言うまでもありません。

次回に続きます。
by himaru73 | 2008-01-14 07:44 | 石屋小僧 | Comments(6)

H君のこと vol.4

我が家では石屋小僧を招いて時折宴を行います。

石屋小僧の中にも、社交性に欠ける人、飲み会が苦手な人、アフターファイブぐらい上司といたくない人・・・
一般社会同様いろいろいますから、無理強いするものではありません。
まあでも、数人の変わり者を除いて、快く誘いに応じてくれる小僧がほとんどでした。

ここでH君が登場します。
外で飲んだ後、私の家で二次会をしようということになってしまうのです。
居酒屋を出るころには段取りが決まっていて、「いいっすよね!」
「・・・もちろん」

私のほうから誘うことが多かったのが、いつの間にかH君の差配で事が進行し、毎回午前様です。
何くれとなく世話をする妻に申し訳なく思いつつも、社交性あふれる彼女本人も楽しんでいるようなので少しは救われます。

普段から話上手のH君、酔うにつれ(最初の店でかなり出来上がっちゃってますけど)パワーが増してきます。
ほとんど独壇場
うるさいけど楽しいから許す!という調子です。
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仕事場では厳しく、飲み会では楽しく。
修業期間中の思い出の一つになっていることでしょう。
H君の果たした役割は大きいと思います。

石屋小僧たちは、年明けしてからそれぞれの地元の名産品を折にふれ送ってくれます。
リンゴや信玄餅・・・
そして何といっても北海道の幸ですね。
妻がH君に愛想良くするのはこういうことだったのか・・・
さすがに主婦の読みは深いと感じました。

九州の土産はまだ手にしていませんので、そちら方面から小僧が来ないかなと妻がつぶやいていました。
by himaru73 | 2008-01-10 14:42 | 石屋小僧 | Comments(6)

H君のこと vol.3

H君、多芸多才です
その一端を紹介したいと思います。

しばしば我が家に遊びに来ていたH君、いつしか小学校低学年の娘たちのアイドルとなっていました。
トランプマジックを披露して彼女たちの心を虜にしてしまったのです。

内容としてはいわゆる子供だましというかすぐにネタばれする程度のものなんですが、
とにかく話術が巧みなんです
大人である私と妻もつい引き込まれてしまいました。

手先の器用さで見せるトリックではありません。
うまく気をそらせる術に長けているんでしょうね。
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まともな仏像を造ろうとすれば、ある程度の器用さが必要です。
道具をうまく使えなければ形になっていきません。

H君は標準レベルを超えてはいましたが、取り立てて優れていたというわけではありません。
むしろ自分の欠点を十二分に自覚し、それを努力で補って製品にするというタイプのようでした。

モノづくりは相手が石ですから、手先の器用さと感性があれば一言もしゃべらずに周囲を納得させることができます。
雇われ職人はそれで十分ですね。

石屋小僧は将来の跡継ぎ、すなわち商売人になる場合がほとんどですから、H君のような話術や社交術は必要不可欠な要素だなと思いました。

※ 写真はvol.2に引き続きH君の作品(側面)です。
by himaru73 | 2007-11-14 20:31 | 石屋小僧 | Comments(11)

H君のこと vol.2

H君には酒の飲み方を教わりました
ン!?何のこっちゃ・・・

石屋小僧と飲むときは、どちらかというと聞き役に回ることが多かったのです。
職人さんてとってもエラいんですから、その一言一言がたとえ飲み会の席であれ重みを持ちます。
軽く冗談を言ったつもりが、まともに受け止められて思いっきり場が白けた、なんてことがよくありました。

”彼らに話をさせよう、工場での不満や寮生活のストレスを吐き出させよう”
年長者らしく鷹揚に構えていたんですねぇ。

酒が入ると饒舌になりますから、いろんなことを喋ってくれます。
私は”うんうん”とうなずきながら彼らの話を聞き、時折助言をし、という具合で飲んでいました。

H君が加わっての何度目かの飲み会、”最近弱くなったなぁ、すぐに酔っ払っちゃうようだ”なんて彼に言ったところ、
うなずいてばかりだもん!飲みながら頭を上下に振ってりゃ酔いが回るのは当然ですよ!
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”ハッ”と気づきましたね。

取引先の接待というわけではないんですから、好きなように飲み、語り、楽しく過ごすのが飲み会の常道ですよね。
そこのところが欠落してました。

H君が、「飲み会だからみんなで賑やかにやりましょうよ、職人だからって構えてないで。
と、教えてくれました。
もちろん、H君というキャラクターが加わるからこその盛り上がりであることは当然ですけどね。

一回り下の年齢にもかかわらず、大都会で苦労を重ねた(・・・らしい)彼に一本取られたというところです。

※ 写真は小僧時代のH君の作品です。素人っぽさが残る中にも、とぼけた表情がいい味を出しています。
by himaru73 | 2007-11-09 17:13 | 石屋小僧 | Comments(6)

K君のこと vol.2

じん肺の疑いあり”、なんて診断を受けたK君、年明けして3年余りたちましたが今や一児の父となりました。
一度おなかの大きな奥さんを伴って訪ねてくれましたが、2年ほど会ってない気がします。

彼とは仕事を離れたところで何かと気が合い、二人で飲みに出かけることもしばしばでした。
仕事であれ何であれ素直で従順という表現がぴったりの青年す。が、年中言われるがままというわけではなく、理不尽な仕打ちには毅然とした態度を示すなど一本筋が通っているのも垣間見えて、とても好印象を与えてくれました。
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(研磨機の下に敷いてあるのは前掛けです。周囲に水が飛び散るのはもちろん自らも水浸しになるため、必須アイテムです。)

跡取りであるにもかかわらず、K君のお父さんは「石屋の後継ぎになるのに3年や5年遅れてもどうってことはない、社会を見てこい」
と、すぐに修業の道へ入らなくてもよいと言ったそうです。
確かに、高校を出てすぐに工場通いの小僧になったのではわかりえない世界が他にあるでしょうから、あとからではできない体験を若いうちにしておけというお父さんの勧めはなるほどな、と感じます。

で、K君が選んだのは完成後間もない関西空港内のさる施設の警備員だそうです。
いずれは家業を継ぐわけですから、早期に辞めてもあとくされがない職種にしたのかもしれません。
場所柄、様々な人間を観察する機会に恵まれたことでしょう。

あまり詳しくないサッカーの話に付き合ってくれた挙句、ビデオや雑誌を貸すから次の飲み会までに勉強してこい、などと上司の権限を間違った使い方で行使したにもかかわらず、素直に従ってくれました。

そして次の飲み会、フリではなく本当に興味を持ったらしく、熱く語るK君がそこにいました
スポーツ全般はもともと好きな元高校球児なので、「サッカーという競技を詳しく知るきっかけになってうれしい」、なんて言い方さえしてくれたのです。

かのナイスガイも30歳ぐらいになっているでしょう、2人目の子はできたかな?
by himaru73 | 2007-11-08 17:02 | 石屋小僧 | Comments(2)

K君のこと vol.1

電動工具を使用する際、もうもうと砂埃が立ち込めます。石の粉ですね。
真冬でも扇風機を回し、工場の窓や出入り口は開けっ放し、当然防塵マスクは着用します。

水磨き(つやを出すために水をかけながら研磨する)の場合、目に見えないほどの粉塵が浮遊するのですが、マスクは着用しないことが多いです。特に夏場は暑くて蒸れますからね。

ところがK君は、磨き仕事に限らず加工作業をしていないときであっても年がら年中防塵マスクを着用しています。
とっても神経質、埃に敏感体質・・・というわけではありません。
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(写真は水磨き用研磨機です)

ある年の健康診断にて、じん肺の疑いあり!と宣告されてしまったのです。

じん肺診断にはその重度によって4段階(だったと思います)あり、K君は最も軽度の「疑いあり」でしたが、いくら個人差があるとはいえ石屋小僧を2~3年やっただけで普通はそんな診断はありえません。K君はタバコも吸いません。

私は小僧時代を含めて20年近く粉塵だらけの工場で過ごしましたが、そのような診断をいただいたことはありません。じん肺の「じ」の字もありません。
マスクに使用するフィルターの品質は現在ほど良くなかったでしょうし、何しろ面倒だという理由で全く着用しない時期もあったほどなのに・・・

何らかの理由で子供時代に肺に負担がかかっていたのかどうかは解りませんが、気を付けるにこしたことはないということで朝から晩までマスク着用となったわけです。

K君が卒業して3年余、結婚して息子も出来、田舎での商売も順調のようです。
その後じん肺云々という話は聞きませんので、進行していないのか、はたまた最初から誤診だったのか良くわかりません。

いずれにせよ、四六時中マスクを着用することは良いことには違いありません。この業界の人にとっては。
by himaru73 | 2007-11-07 17:11 | 石屋小僧 | Comments(4)

H君のこと vol.1

Hくんと約7年ぶりに再会しました。彼の結婚式に出席して以来です。
遠方に住んでいるためなかなか会えなかったのですが、今回石製品の展示会に合わせて飛行機に乗ってやってきました。

石屋小僧の中でも特に印象深い男ですので、何から書いていいものやら…と逡巡していたところに向こうがきっかけを作ってくれました。
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ちょうど一回り年齢差がありますのでH君が20歳で工場にやってきたとき、私は働き盛りの32歳、職人として脂が乗り切った状態でした。本人の自覚がないままに結構な威圧感を周囲にまき散らしていたことでしょう。

初対面でH君の目を見据えてやりました。ガンを飛ばしたってやつですね。
恫喝しておいて自分の支配下に置こうなどという目的ではありません。たかが5~6年で一人前になれるわけではないので、別にそんなことしなくても圧倒的に職人はエライんですから。

本人が後日語ったところによると、”こいつは仕事できるやつなのか?という視線でいきなり睨みつけられた、正直言ってかなりビビった”そうです。
そりゃそうだわな。

他のおとなしげな連中とは異質なものを感じたため、自分としても意外な迎え方をしてしまったようなのです。
東京での放浪経験等が人間性に深みをもたらし、それが外面ににじみ出ていたのでしょうね。
最初から一目置かざるを得ない雰囲気を醸し出していたのかもしれません。
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ともあれH君が新生活に慣れて仕事以外の話もいろいろできるようになるにつれ、前述の予感どおりというか器の大きさみたいなものがわかってきました。

人間の器というのは重ねた年の数で決まるものではありませんね
H君とは対等な立場で話すことはもちろん、こちらが教わることもしばしばでした。
数々のエピソード、おいおい紹介していきたいと思います。

久しぶりのH君、今や2児の父ということもあって20代のころのような無茶はやってないでしょうけど、豪放磊落ぶりは相変わらずでしたね。
by himaru73 | 2007-10-22 08:35 | 石屋小僧 | Comments(6)

日常の出来事あれこれ。  ときどき「石」。


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